1.天才とは

 フレデリック・ヘンリー・ロイスは、天才であったと、高斎正訳「ロールスロイス」の著者、レオナード・セトライト氏は記している。では、天才とはなんであるか?という疑問に対し、セトライトは「何パーセントかの霊感と、何パーセントかの努力からなるとする、平凡な定義には同感できない」とし、「天才の条件とは、物事に対する好奇心と、不完全であることをはっきりと認識する心である」としている。また、「ロイスの名前を世界的に有名にしたのは、まさに彼のこのような性格であり、どのような改良が可能かを考える洞察力とそれを実行に移す能力である」と続けている。

 何かの分野で、類まれな能力ー天才と呼ばれる人物は、我々の周りに時に存在する。しかし、その全てが歴史に残るような偉業を達成するとは限らない。日本では、勉強ができる、高学歴、等が人間の優秀さを示す指標とする傾向がある。しかしこれは、単なる「頭の知能指数:intelligence index」である。欧米では同時に「心の知能指数:emotional intelligence」が重要視され、企業が人を採用する時などに用いられる。この心の知能指数に関しては、様々な解釈があるが、最も解りやすく説明されているものを採用すると、次の5つの要素からなる。

 ①判断力 ②自制心 ③忍耐力 ④社会性 ⑤他人への思いやり

 この5つの要素を、各20点として自己採点すれば、自分の「心の知能指数」を知ることができる。

 さて、ロイス氏が栄光の道を歩くことが出来たのは、上に述べたように、彼の頭脳が天才であった事に加え、心の知能指数も非常に高かった事にも由来する。ロイス氏は、天才科学者であるうえに、純粋な天才技術者でもあった。しかし彼が時をして出会う、チャールズ・スチュアート・ロールスの財力とクロード・ジョンソンの商才に恵まれなかったら、その才能を発揮し、100年160万キロ走る車を作り上げることは出来なかったと考えられる。まさに絶妙なタイミングでこういう出会いに恵まれるというのは、ロイス氏の心の知能指数の高さに由来すると思われる。

 

   さて、次回はロイスの生い立ちと、車に興味を持つまでの半生を記載したいと思います。

令和2年2月6日

林英紀記